ビームライフルとは、実弾の代わりに光線を発射して射撃を行うもので、銃の姿かたちや重量、競技ルールなどはエアライフルとほぼ同じだが、公安委員会の所持許可を必要としない。なので、年少者(ジュニア)の参加も多く、将来のエアライフル射手の育成にも役立っている。国体(2024年佐賀大会より「国民スポーツ大会=国スポ」と改称)や全国高校ライフル射撃選手権大会などでは、ビームピストルと共に正式種目になっていて、エアライフルやクレー射撃の世界でトップレベルで活躍している選手の中にも、ビームライフルで育った人たちが数多くいるようだ。
もちろん、成人に対するエアライフル普及へも貢献している。私もビームライフルを経験して、エアライフルを所持するに至った。
いきなり所持許可を必要とするエアライフルを始めるのはハードルが高いと感じるならば、まずはビームライフルから始めてみよう。奥の深い世界が見えてくる。ビームライフルは大会も定期的に開催されているし、段級審査も受けることができる。
(同様にビーム式のピストルも存在する。現在はデジタルピストルとして普及しつつある。→本ページ記事参照。)
身体障害者にとっては、エアライフルを所持する前に、銃器の重さやハンドリングの感触などを体験できるものとして、ビームライフルに触れてみるのは重要だと思う。エアライフルを所持したら、このような銃器を取扱い、それをガンケースに入れて運搬することになる。実際問題として、それが可能かどうか確かめるためにもビームライフルをやってみる価値はあるだろう。
ただ、残念なことに「全障スポ(国スポの障害者版)」の種目にはビームを含む射撃競技はない。パラ射撃の大きな大会を目指すなら、エアライフルへ進むことになる。
ビームライフル(BR)に使用する銃は、射撃競技用の実銃とほとんど変わる所がない。唯一の相違点は銃弾が発射されない点だ。キセノンランプの発光機能が組み込まれていて、引き金を引くと光線が発射される仕組みだ。光線は目には見えない。
ビームライフルの銃は実銃に準拠した仕様になっていて、形状や重量はもちろん、フロントサイトやリアサイトまで同じ造りになっている。本物のサイト(照準器)が付いているから、リアサイトで着弾位置を上下左右に調整することができる。さらに、次弾を発射する前には実銃と同じようにレバーを操作してコッキングする必要があり、なんともリアルだ。
10m先に設置された標的には受光センサーが内蔵されていて、それに当たると、実銃のエアライフルの発射音に似せた「バシュ!」っという音とともに点数が表示される。満点の10点に当たると、標的装置の王冠マークが赤く点滅する。
昨今主流のプレチャージ式のエアライフル銃の銃身の下には圧縮空気を蓄えておくエアシリンダが付いているが、ビームライフル銃ではそこにバッテリが装着されている。使用する前にバッテリ先端にあるスイッチをONにし、ボディ横にあるLEDランプが点灯していることを確認する。
重量は実銃と同じ5kg近くあるので、初めて持つと重さに驚く。それを何度も上げ下げして構えるので、慣れていないと翌日には筋肉痛になるほどだ。年少者などにはジュニア用の銃が用意されていることもある。それでも3kg以上ある。
ただ、成人はやたらに軽いものを使うべきではない。ある程度の重さがないと照準が安定しないことを、しばらく体験すると思い知るようになる。
このシステムは、銃規制が厳格な日本において、所持許可を取得しないでもスポーツ射撃を普及させ、楽しめる環境を作るために日本ライフル射撃協会が開発を進めたものだ。したがって、10歳以上ぐらいであれば、誰でも気軽に始めることができる。
ルールなどもほぼエアライフル射撃競技に準拠していて、大きな違いは弾丸発射の有無以外、ほとんどないといってよい。
あえて異なる点をあげるとすれば、そのひとつは、射撃姿勢が立射(S)と肘射(T)の2姿勢(複合2Pもある)であること。
もうひとつは標的の仕様で、標的はエアライフルの7号標的に準拠しているが、エアライフルでは10点圏の大きさが0.5mmであるのに対し、ビームライフルでは1.0mmである。実際に体験するとその差はほとんど感じない。
↓ビームライフル銃にはいくつかのモデルがある。写真は伊勢原射撃場の物で、もっとも標準的なタイプだ。本体が木製で、サイト(照準器)にはアンシュッツ製のものが装着されている。
重量は実銃に似せて5kg近くある。本体は木製だが、チークパッド(頬付け部分)とバットプレート部(肩当て部分)は上下に調整できる。
銃身の下にバッテリがあるが、この銃では電源コードを直結している。
(電源コードを直結しないタイプのバッテリが一般的。)
写真は右利き用のもので、グリップの形状が右手で握りやすいように加工され、コッキングレバーも右側についている。伊勢原射撃場には左利き用のものも用意されている。他の会場では、右利き用のものしか備え付けられていないことが多いようだ。
なお、子どもが扱いやすいように重量3.5kgほどのジュニア用の銃も存在する。
↓高精度の光センサーにより、1.0から10.9点まで細かく感知できる。
下部中央の黒い点が標的で、少なくとも黒い点の周りの3本の円の中に当たらないと点数はゼロ点、そして白い四角形を外れると機械が反応しない。
10点圏は黒い円の中心にある1.0mmのドット部分である。10点を取ると、王冠部分が赤く点滅する。
「READY」(準備完了)のライトが緑色に点灯すると、次の射撃ができる。
↓ターゲットで検出した着弾点数と着弾位置を表示するディスプレイ。射座テーブル近くに置かれていることが多い。右側の円に弾がどこに当たったかを赤いドットで表示し、左上の画面に数字で得点が表示される。ともに表示は数秒間出たら消えてしまう。
得点の数字は、通常モードでは9や10のように表示されるが、ファイナルモードに切り替えると、競技会と同じく9.9や10.5のように小数点まで表示することができる。
着弾位置の表示も、通常モードとファイナルモードでは異なり、ファイナルモードでは10点の場合に小数点以下の数値が表示される。
装置の左下はスピーカーで、ここから擬似発射音が聞こえる。
↓どこの会場にも装備されているわけではないが、得点をすべて自動的に記録・集計して印字してくれる装置である。
試射、本射、ファイナルの切替で、シリーズごとの小計・総計を計算してくれる。
写真は、伊勢原射撃場のもの。
印字データは持ち帰って、反省会に利用しよう(笑)。
ビームライフルは実弾が出ないとはいえ、実銃と同じように扱うことが求められる。銃口を人に向けないことや標的に向かって据銃したとき以外は引き金に触れないこと、射座のラインから不用意に前に出ないことや標的に許可なく近づかないことなどのマナーを徹底して守るようにしなければならない。
使用しないときは、銃口を標的のある方向へ向けて、安定した状態でテーブルに置く。銃口にカバーを掛けるように指導している会場もある。もちろん、銃は精密機器でもあるので、持ち運びや取扱いは正しく丁寧に行う。
また、会場内のマナーとして、静粛にすることのほか、フラッシュ・ストロボを使用しての写真撮影はしてはいけない。機械の性格上、誤作動を起こすことがあるからだ。
それと、当たらないからといって、リアサイトの調整ネジをやたらと回さないで欲しい。
サイト(照準器)はアンシュッツ製など本物が取り付けられていて、上下と左右に着弾点を調整することができる。
銃口とサイトをきっちり合わせるために付いている機能で、射手によって癖もあるので、調整ネジを触ることは仕方がない。そのためには銃をスタンドに乗せて、固定して撃ってみてから合わせるべきものだ。
普通に肘射などで構えて数発撃った程度で、ネジを安易にぐるぐる回すのはやめてもらいたい。
そもそもドイツ製リアサイトの調整には決まりがあり、コツがいる。それを知らないで触るとむしろ危険である。
(リアサイトは精密機器でもあるので壊れやすいし。)
ドイツ製リアサイトの調整方法は→こちらを参照のこと。
ビームライフル競技のルールは、原則としてエアライフル競技に準じている。
主には制限時間内に60発または40発を撃って総合得点で競う。射撃姿勢は立射がメインだが、ビームライフルだけに認められたテーブル撃ち(肘射)という姿勢もある。椅子に座った状態で、両肘をテーブルに着けて銃を構える撃ち方である。こちらは初心者や年少者などが中心となる。公的な射撃大会でも立射に加えて肘射を種目として実施していることがあり、同時に段級審査も受けることができる。
エアライフル競技の基本ルールについては、本サイトの「エアライフル射撃とは」を参照いただきたい。
ビームライフルは、高校などの射撃部で利用されているほか、公立の体育館やスポーツセンターなどで定期的に行われていることがある。毎週のように一般公開として門戸を開いているところもあれば、講習会や体験会として不定期に開いているところもある。たいていは地元のライフル射撃協会や体育協会などが主催している。
地元の体育館かスポーツセンターなどの施設、また、ライフル射撃協会などのサイトを調べてみると良い。ただし、同じ射撃でも、クレー射撃や狩猟とは関係がないのでお間違えなきよう。
一般公開も講習も事前予約が必要な場合があるので、確認すること。
小学生から定年後の年配者まで老若男女さまざまな人が参加しており、経歴も全くの初心者から大会に参加している選手まで幅が広い。意外と女性が多いのには驚かされる。
最初は肘射ち(BRT)という姿勢で射撃してみることになる。テーブルに両肘をついた状態で銃を構える撃ち方である。
まずはスタンド(台)やサンドバッグなどに銃を載せて、サイト(照準器)で標的に照準するコツを体得することから始めるとよい。銃の扱いと照準に慣れたら、スタンドを外して、肘射ちで練習する。テーブルでの肘射ちはエアライフルには無い種目だが、ビームライフルにだけ許された正式な射撃姿勢で、大会や段級審査もこれで参加できる。
肘射ちだけでもよいが、ライフル射撃の醍醐味を味わってみたければ、立射姿勢に挑戦するのもよいだろう。構え方は独特な姿勢なので、指導員の先生に基本姿勢を教わるべきだ。肘射ちでまずまずの成績を出していた人も、4~5kgもある銃を立って構えるだけで参ってしまうかもしれない。最初は点数が出るだけで立派だと思う。焦らずに研鑽を積んでいくうちに、新たな沼にはまっていくことだろう。
自分のサイズに合う 射撃用ジャケット(コート)やズボンを借りることができれば、身体が固定しやすくなるので命中率がグッと上がるはずだ。
ビームライフルを始めたいと思ったら、一度は講習会か体験会に参加することをお勧めする。あるいは指導員が常駐している会場に参加しよう。銃の扱い方や基本的なマナーとルールなどを学んでおかないと、単なる射的ゲームで終わってしまいかねない。射撃がいかに奥の深い競技であるか、指導員さんのお話に耳を傾けてみよう。
ビームライフルは、将来エアライフルに進みたいとお考えの方にとっても様々な意味で有利に働くと思う。実銃の初心者講習申込み時や所持許可申請時にビームライフルを経験していることを伝えると、いくぶんスムーズになる気がするし、何より、ライフル射撃の関係者とお知り合いになれることは大きい。
身体障害者のための正しい射撃姿勢を教えていただける環境は、残念ながら現在のところ多くないようだ。
一般の健常者の姿勢とは大きく異なるので、正しく指導していただける場所や施設、設備などの情報がもっと欲しいところだ。私の場合は、2016年に東京都が開催したパラリンピック選手発掘プログラムに参加したとき、日障射連の方に直接指導いただき、概略をお聞きした程度だが、それだけでも大変参考になっている。
ビームライフル銃、標的装置、点数表示装置など使用する用具一式は、すべて会場に用意されているので、基本的には持参するものは何もない。動きやすい服装がベストだが、フレアスカートを穿いた女性が椅子に座って撃ったりしている。学校帰りのセーラー服の女の子が隣で撃っていたりするとちょっとほっこりする。(試合のときはそれなりの服装が求められる。)
会場によっては射撃結果の印字装置がない場合もあるので、点数やアドバイスの記録のために手帳やメモ用紙と筆記具を用意すると良い。またチークパッドなどの調整ができるので、こだわる方はドライバーセットやコインドライバーを持参するとよい。
写真は指導員に声を掛けてから撮影しよう。撮影可でも、フラッシュは禁止だ。標的装置が誤作動することがあるからだ。
本格的にやりたくなったら、射撃コート(ジャケット)やズボン、シューティングスタンドなどを買い揃えてもよいだろう。これらは将来エアライフルに進んだときにも使用することができる。
ビームライフル銃本体は個人で購入することもできるようだが、かなり高価だし、バッテリや充電器も必要になるので、まったくの個人で購入するのはあまり一般的ではない。銃を買うお金があったら、射撃コートやズボンを買うほうが実用的だと思う。
銃や装置類の製造販売は、茨城県古河市の興東電子株式会社で取り扱いがあるようだ。なお、購入に際しては日本ライフル射撃協会等の会員登録を原則としているようだ。
ちなみに、据銃姿勢の練習のためにモデルガンなどを使ってもよいかという質問を受けるが、あまりお勧めできない。現在のところ、競技用のエアライフルと同型のモデルガンは存在しない。たとえ似たような銃があったとしても、照準の方法やトリガーの感触なども異なるので、意味は無いだろう。それより、ビームライフルの練習会場に足しげく通うほうが身のためだ。ほかの銃で変な癖は付けるべきではないと思う。
上肢が不自由な身体障害者が射撃を行うときは、エアライフル射撃においてもSH2というスタンドに乗せて撃つことが認められているが、ビーム射撃でも必要な方はぜひチャレンジしていただきたい。
(→SH2スタンドについて参照)
ビームライフルは射撃場のほか体育館などの施設で行われていることが多いが、少なくともひとつはSH2スタンドを備品として備えていていただけたら幸いである。
日本ライフル射撃協会が、2002年にNECパーソナルプロダクツと新しく共同開発したデジタル・シューティングというものがある。DSS(Digital Shooting System)という新しいデジタル機器を用いたライフルやピストルと専用標的で、赤外線レーザー光線を発射する仕組みだ。デジタルライフルやデジタルピストルという名称で紹介されているが、発想はビームライフルと同じである。
現在、ライフルは「ビームライフル(BR)」、ピストルは「デジタルピストル(DP)」と呼ぶことが普通のようだ。
なお、システム自体は、2017(平成29)年より興東電子株式会社による新型のビームピストルが普及し始めており、そのゆえか国スポ(旧国体)種目ではBPと呼んでいる。
デジタルピストルは、市販の単三ニッケル水素充電池で赤外線レーザー光線を発射する。1本の電池で約6時間連続使用できるそうだ。得点や着弾点は標的と接続されたPCに表示される。レーザーは標的に向けたとき以外は発射できない仕組みになっているという。重量は実銃のエアピストルと同じ、1kg弱だ。
ピストル本体は約18万円、専用標的は約27万円する、と当時のニュースに記載がある。レンタルシステムは1日5,250円だそうだ。
現在、専用標的の販売はすでに終了しており、システム全体も生産中止で、しばらく後継機種の選定が待たれていた経緯がある。2017(平成29)年からようやく新モデルが発売されたので、今後徐々に移行していくものと思われる。
画像:興東電子株式会社
日本ライフル射撃協会は、2013(平成25)年からデジタルピストルの後継機種について選定作業をしていたが、4社の提案のなかから興東電子製のビームピストルを選定し、2017(平成29)年度から移行を始めている。
興東電子はビームライフルを作っていた会社で、ビームピストルも追加になった格好だと思われる。
この銃は不可視光線レーザーを発射する仕組みで、レバーアクションにより1発ずつコッキング動作をする。単三電池1本は銃身の下に装着する。
グリップは、エアピストル実銃で日本でのシェアが大きいステイヤーLP10のものを使用している。
サイト調整はもちろんのこと、トリガーの重さや引きしろなども微調整可能。
銃身のように見えるのは実は飾りで、レーザー発射口はその下の箱状の部分に付いているようだ。
専用標的に接続するPCの推奨スペックはWindows7以上、Celeron 2コア以上などさほど高性能のものは要求されない。
標的(ターゲット)は、PCがなくても、ビームライフル用ディスプレイとプリンター装置に接続して使用することができる。
「あきゅらぼ」サイトによれば、銃本体89,000円、標的59,000円(税抜き)らしい。後継選定で一騎打ちとなった相手がエアガンメーカーのマルゼンだったというのが面白い。
2020東京オリンピックでなんとなく注目されていた競技に「近代五種」というものがある。水泳やフェンシングなど5種目をこなして競うというものだが、その中にピストル射撃があるのだ。2012年のロンドン五輪より、ピストル射撃はレーザーピストルを使うようになったらしい。
正確には「レーザーラン」というもので、レーザーピストルを使用して5つの的を50秒以内に撃ち終える射撃と800メートルのランニングを交互に4回行う。男子女子それぞれ別に競技が行われ、2020東京五輪では、すべての種目がひとつの会場で行われたが、画期的な試みだったそうだ。
2024パリオリンピックでは、男子個人で、自衛隊の佐藤大宗選手が日本人初のメダルとなる銀メダルを獲得し話題となった。ちなみに金メダルはエジプト、銅メダルはイタリアで、そこに食い込んだ日本選手の結果は、これまでほとんどかすりもしなかった歴史の中で快挙と言える。
余談だが、2028ロサンゼルスオリンピックより、近代五種の一種目だった馬術がオブスタクルという障害物競走に変更になるそうだ。
まったくの初心者が、見よう見まねでエアライフルによる標的射撃を始めてみた。ほとんど独学状態で、しかも身体に障害アリ。
こんなことで大丈夫か?
アレコレもがきながらも、楽しんでいる様子をご覧ください。
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Un principiante discapacitado de tiro le dice cómo comenzar un tiro al blanco con rifles de aire comprimido en Japón.
殘疾人射擊初學者講述瞭如何在日本開始氣步槍射擊。
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