射撃姿勢

身体障害者が所持許可やその更新を申請する際に、担当警察官から「射撃姿勢はどのような形で撃ちますか?」と聞かれることがある。

私は、「椅子に座って、銃器をスタンドに乗せて撃ちます」と答え、実際にそうしている。

原則として、エアライフル射撃場では、銃砲を安全に取り扱うことができれば、射撃姿勢は特に限定されていない。競技会に参加せず楽しんで撃つだけならば、椅子に座って銃を台に載せて撃っても構わない。しかしだんだん物足りなくなってくる。ふつうの台に固定するとけっこう当たるのだ。

パラリンピックなど国際試合での公式ルールでは、射手は車椅子に座り、障害の状態によっては、銃器を規定のスタンドに委ねて射撃をしたりしている。それで私も規定のスタンド(SH2スタンド)を入手して、今はそれに載せて座位で撃っている。このSH2スタンドはバネで支えられているので、銃を載せてもグニュグニュ動くので安定させるのがたいへんである。自分の腕で支えるほうがマシではないかと思えるほどだ。

一般健常者の射撃姿勢

公式ルールの射撃姿勢について説明しておこう。

健常者も身体障害者も、使用する銃器や銃弾(口径4.5mm)は同じもので、距離(10m)や標的も共通している。

両者の間で何が違うかというと、射撃をするときの姿勢である。厳密に言うと、姿勢の名称は同じだが、実際の構え方が異なっている。

 

健常者が射撃をするときは、次の三姿勢である。

<立射(S=Standing)りっしゃ>

 両足で直立した状態で、銃を構えて撃つ。

 身体の向きは標的に対し90度横向きに立ち、右利きの場合、左の腰を少し前に突き出すようにして左肘を骨盤に乗せて構える。

 

<膝射(K=Kneeling)しっしゃ>

 しゃがんだ状態で、片膝を立て、その脚に肘を委ねて撃つ。

 

<伏射(P=Prone)ふくしゃ>

 床に身体をうつ伏せに寝かせ、両肘をついて撃つ。

 

(参考:日本ライフル射撃協会 公式サイト「基本のルール」)

それぞれ細かな規定があるので、公式サイトをご覧いただきたい。

 

なお、ビームライフルには、特有のものとして「肘射(T=Table)ちゅうしゃ」がある。

 


身体障害者の射撃姿勢

さて、身体障害者はどうなのかというと・・・。

まず、身体障害の部位や状態、特に銃器を腕で支えて構えることが可能かどうかで、

・SH1クラス=銃器を自分の腕で保持し射撃する(下肢のみの障害)

・SH2クラス=規定のスプリングスタンドを用いて銃器を保持し射撃する(上肢の障害)

の二つに大きく分けられる。

(頚髄損傷などの上肢下肢障害者はSH2に該当する。ポイントは銃を腕で支えて構えることが可能かどうかで、SH1かSH2に分かれる。)

すべての姿勢に共通していることは、座位のまま射撃をすることが認められており、椅子または車椅子を使うことができるという点である。 詳しくは下に掲げる資料を参考にしていただきたい。

 

日本パラ射撃連盟の公式サイトによれば、このクラス分けは、「障害がある射手の公平な競技を可能にする目的」で行われるもので、国内規定と国際規定がある。競技会への参加、障害者規則の適用、推薦申請および段級受験などの根拠になるとのこと。なお、ビームライフル自由姿勢のみに参加する場合は、クラス分けは不要だそうだ。

国際規則については、IPC(国際パラリンピック委員会)が定期的に発行する『IPC射撃技術規則及び規定』を参照する。

 

参考までに、それぞれの射撃姿勢を下記に挙げておく。

なお、下記に掲載している資料は2009年のものであるが、ルールは随時変更されることがあるので、最新の情報を確認されたい。

出典:日本パラ射撃連盟の資料より

障害者の射撃姿勢の説明(ライフル SH1クラス)

一般健常者の立射では標的に対して90度横向きに立つが、障害者射撃の立射では標的に対して45度ほどの角度を付けて構える。背もたれの高さは障害の内容によって異なる(サブクラスで定義される)。

立射ではSH1・SH2ともスリングは使えないが、SH1のみ膝射と伏射はスリングを使うことができる。(スリングというのは銃と身体をつなぐベルト状の用具である。)

膝射はSH1のみにある姿勢で、銃を支える腕だけを委託させる。

伏射はテーブルを使うことができ、両腕を付けて身体を委ねることができる。

障害者の射撃姿勢の説明(ライフル SH2クラス)

SH2においてはすべての姿勢(といっても立射と伏射だけ)でスタンドに委ねて射撃することができるが、スリングを使うことはできない。

SH2の立射と伏射は同じように見えるが、大きな違いはテーブルを使用するかしないかで、立射はテーブルを使用せず、腕が触れるのを許されるのは自分の身体だけであるのに対し、伏射はテーブルに両腕を付けて身体を委ねることができる。両方ともスタンドに銃を乗せることができる点は共通している。

いずれの場合も、引き金を引かないほうの手を銃器に添えることは可能である(両手が重なってはいけない)。

SH2においても、背もたれの高さは障害の内容によって異なる(サブクラスで定義される)。



SH1およびSH2には障害の部位および程度により、さらに細かな小分類(サブクラス)に分かれている。詳細は本サイトのクラス分けのページを参照されたい。

なお、都道府県レベルの競技会や体育祭などでは、参加をSH1のみに限定している場合もある。