所持許可取得への道

ここでは銃砲(猟銃・ライフル銃・空気銃)のうち、空気銃(エアライフル)の所持について述べる。

所持許可関連の窓口は住所地の所轄警察署(生活安全課)であるが、許可に関わる審査や証書等の発行は公安委員会が行う。

 

所持許可取得への道で、クリアしなければならない関門はいくつかある。

でも、動き出す前に留意しておかなければならないヤマがあるのだ。それは同居家族の同意だ。配偶者(妻や夫)、子どもなどの承諾が無ければ、所持許可が下りることはない。(一人暮らしの人は別居の親兄弟なども必要な場合がある。)「賛成」と言ってもらえなくともよいが、少なくとも「反対」と言われると前へ進むことはできない。初心者講習受講の申込み時にも必ず聞かれるし、ガンロッカーの立ち入り検査のときには配偶者などに直接面談がある。

家族に話すのは面倒だし、どうせ良い顔をされないだろうと判断して、内緒でやってしまおうと考える向きもあるかもしれないが、この場合も所持許可が下りることはないだろうし、それ以前に初心者講習の申込みを受理してもらえないこともあり得る。

 

また、賃貸住宅に住んでいる場合は、大家さん(管理人)の承諾も得ておく。入居時の契約書に銃砲関連の禁止事項が無いかも確認しておく。マンションなどの場合では、管理組合を通じて入居者全員の承諾を必要とすることもあるようだ。

なお、大家さん(管理人)の承諾は、ガンロッカーを設置してよいか(=銃砲を保管してよいか)についてである。住居人が銃砲を所持する是非についてではない。なので、どうしても承諾が得られない場合は、銃砲店や射撃場の委託保管制度を利用する手もある。これは有料になるが、所持許可者に代わって、合法的に銃砲を預かってもらう方法である。 

ガンロッカーは基本的に壁などにネジ止めして固定することとなっているが、壁に穴を開けないで固定する方法を紹介しているサイトもあるようだし、私が所轄署から聞いた話では、20kgぐらいの重りを入れるということでもOKのようだ。→「ガンロッカー」参照

 

説明や説得の方法としては、あくまでスポーツであることを強調するのはどうだろうか。オリンピックなどでも正式種目になっているし、射撃場は公立の体育館に設置されていることも多い。狩猟するわけではないので、生き物を殺めたりもしませんと沿えるのも良かろう。エアライフルは火薬を使うものではなく、散弾銃や装薬銃とは別物であることなど一般の人は理解していないので、基本的なことから説明を要するかもしれない。危険なものではないことも強調する。十分に下調べをして、説得材料を増やしておこう。

   

さて、家族や大家さんの同意が得られたとして、順次クリアすべき関門を整理しておくと、以下のようなものになる。空気銃は、クレー射撃用の散弾銃に必須の「射撃教習」が省略される。

このうち(6)は関門と言えるほどのものではないが、身体障害者にとっては、初めて銃器を抱えて警察署まで行かなければならないという点で労力と緊張を要する。

1)警察署で初心者講習の申し込みを受理してもらうこと

  (1回で申し込めたらラッキーだ。)

2)初心者講習の考査に合格すること

  (事前にしっかり勉強しておかないと合格できない。)

3)所持許可申請を受理してもらうこと

  (かなり踏み込んだ面談・聴取を覚悟しよう。)

4)身辺調査に協力してくれる人を選定しておくこと

  (友人だと思っていた人も嫌がる場合がある。)

5)ガンロッカーを設置し、立ち入り検査と家族への聴取をクリアすること

  (ガンロッカーの設置場所や固定方法に悩むし、家族の受け答えにもドキドキさせられる。)

6)許可証が交付されたら、購入した銃器の確認を受けること

  (手助けなしに重い銃器を抱えて、警察署内をうろうろしなければならない。)

最初のステップ

いきなり警察署とコンタクトを取るのが気が進まない方は、地元のライフル射撃協会に問い合わせてみよう。各都道府県や市区町村などに協会があるはずなのだが、地域によってかなり温度差がある。インターネットのサイトの充実度や更新頻度などを見れば、熱の入れようがだいたい分かる。昨今では情報入手の方法としてインターネットは最重要と思われるのだが、人手不足のせいかスキルが十分でないのか、満足のいくサイトを公開しているところは多くない。地元の協会がダメなら隣の市区町村または都道府県を探してみるとよい。

また、エアライフルを始める前に、ビームライフルの門を叩いてみることをお勧めする。別項で紹介しているが、ビームライフルは、所持許可も装備も必要なく、擬似的にエアライフルを体験できる絶好の機会だ。地元ライフル射撃協会が運営していたり、関係していたりするので、射撃協会や関係者、指導員たちと知り合いになることができ、エアライフルへの移行もスムーズになる。初心者講習受講の申込みや所持許可の申請にあたっても、ビームライフルの経験があれば有利に働くだろう。

さらに、銃砲店に問い合わせてみるという手もある。ただし、全国に点在する銃砲店といえば、クレー射撃などの散弾銃や狩猟用のライフル銃を扱う店がほとんどで、競技用のエアライフルとなると数えるほどしかない。それでも、所持許可の取り方ぐらいは教えてもらえると思う。競技用エアライフルだけをやりたいという方は、最初から専門店に問い合わせることをお勧めする(当サイト「銃砲店」のページ参照)。


銃砲の種類

わが国で所持の許可を得て所持することができる主なものは、次の種類の銃砲である。

・空気銃=エアライフル、エアハンドライフル、エアピストル

・猟銃(装薬銃):ライフル銃=スモールボアライフル、ビッグボアライフル

・猟銃(装薬銃):ライフル銃以外の猟銃=散弾銃、または散弾銃&ライフル銃以外の猟銃(ハーフライフル)

このなかで初めての銃砲所持許可申請で所持できるのは、次の種類の銃砲である。

・空気銃=エアライフル、エアハンドライフル

・ライフル以外の猟銃(装薬銃)=散弾銃、ハーフライフル

(装薬銃であるライフル銃を所持するには、少なくとも10年以上、散弾銃などの装薬銃を所持しているなどの条件がある。エアピストルについても、所持について厳しい条件が課せられている。)

銃砲所持の「免許」という言い方をときどき耳にするが、それは正確ではない。

あくまで銃砲所持の「許可」であって、しかも1銃1許可制、つまり1丁の銃に付き、いちいち所持の許可を得る必要がある。なので、すでに銃砲所持許可を取得している者であっても、新たに別の銃を所持したい場合は、改めてその銃について所持許可の申請をする必要がある。

許可を受けた銃砲は、許可を受けた者以外触れることも許されない。すでに銃砲所持許可証を取得している者であっても、他人の銃砲を触れてはいけないことになっている(指導員資格者は除く)。

また、すでに銃砲を所持していて、その銃を家族、たとえば配偶者や息子も使いたいと共有で申請することも認められていない。家族も所持許可を得たい場合は、別に銃を購入する必要がある。この場合、保管場所であるガンロッカーも別に設置しなければならない。

 

銃砲と言っても、上記のようにいくつか種類があるので、エアライフル所持に関して電話などで警察署に問い合わせるのであれば、最初は「エアライフル」と言わずに「空気銃」と言ったほうが話がスムーズに進むような気がする。

エアライフルと言うと「ライフル」の部分がクローズアップされて、いろいろと大仰に捉えられかねない。単にライフルと言うと装薬銃を指し、それを所持するためには条件や手続きも煩雑だからである。


人に関する欠格事項

次の項目の一つでも該当する者は、許可を受けることができない。

1.18歳(猟銃は20歳)に満たない者(例外規定あり) 

2.統合失調症やそううつ病等の精神的な病気にかかっている者、又は認知症である者 

3.アルコールや覚醒剤等の薬物の中毒者、心神耗弱者 

4.住居が定まっていない者 

5.過去に一定の犯罪歴のある者や所持許可の取消処分等を受けた者 

6.暴力団関係者 

7.ストーカー行為や配偶者暴力行為をした者、その他人の生命、身体若しくは財産若しくは公共の安全を害し、又は自殺のおそれのある者 

8.同居の親族に上記2,3,6,7に該当する者がある場合など 

 

以上のほか、「所持する銃砲に関する欠格事項(仕様やサイズなど)」というものがある。軍用銃や変装銃などは持つことができない。

仕様については、たとえば銃砲内に装弾できる弾数についても規定があり、ライフル銃と空気銃は弾倉に5発まで、散弾銃は2発までとなっている。なお、標的射撃に用いられる空気銃については、1発ずつ装填する仕様である。

所持許可申請にあたっては、銃砲店から購入できるエアライフルやエアハンドライフルであれば問題はない。

18歳未満の場合

人的欠格事項により18歳に満たない者は所持許可を受けることができないが、14歳以上18歳未満であれば、銃砲(空気銃)を使用する許可を得る道がある。

ひとつは「年少射撃資格」を得るか、もうひとつは「射撃エリート」としての低年者推薦を受けることである。その違いは、年少射撃資格による者は、指導者の銃砲を借りて、指導者の監督のもとでのみ使用することができ、射撃エリートは、自身で銃砲の所持許可を受け、保管施設に預けている銃砲を一人で運搬し、射撃場で使用することができる。高校や大学の射撃部などで活動している者は、これらの制度を利用している。なお、18歳の誕生日以降は通常の所持許可となる。

いずれも将来有望な射撃選手を育てるための制度であり、ただの趣味としてやろうとする場合は、この制度の適用は難しいだろう。詳しくは日本ライフル射撃協会の公式サイトを参照のこと。

18歳未満でとにかく今、何か始めてみたいとお考えの方はビームライフルからやってみることをお勧めする。ビームライフルをやっていれば、将来エアライフルに移行したときも役に立つはずだし、それ以前に警察署で所持許可を申請するときに話がしやすくなる。


所持目的

所持の目的は、次の4つに限定されている。

・標的射撃

・狩猟

・有害鳥獣駆除

・少年射撃資格者の指導

 

このうち、「有害鳥獣駆除」は猟銃を使った狩猟経験が3年以上必要であり、また、空気銃を所持していない人は「少年射撃資格者の指導者」にはなれないので、初めて銃砲を所持するための目的は「標的射撃」か「狩猟」の2つだけということになる。

したがって、申請時などに目的を聞かれ、これ以外、たとえば「単に本物を持ってみたいから」とか、「コレクションしてみたいから」などという理由では絶対に許可は下りることはない。

これら所持目的は、「猟銃・空気銃所持許可証」の銃器のページに「用途」として記載される。用途で指定された目的以外で使用することは許されていない。

ちなみに狩猟目的の場合は、所持許可とは別に狩猟免許が必要である。

(1丁の銃で、「標的射撃」と「狩猟」など複数の目的を指定してもらうことは可能である。)


身体障害者の銃砲所持について

わが国の法律では、上に述べたように所持許可の申請をして、所定の審査ののち許可を得て銃砲を所持することができるが、身体に障害があること自体は欠格事項に該当しない。それゆえ、身体障害があるからといって直ちに所持不許可とはなりえないはずである。

であるから、身体障害ゆえに射撃を諦めることはない。パラリンピックにも射撃競技が採用されていて、パラ射撃として普及しつつある。車椅子に座ったままで射撃をすることも可能だ。

 

ただし、許可取得の最低条件として、本人が銃砲を安全に扱えること、および第三者の助けを借りることなく保管・運搬等ができることが必要だ。前者は当然だが、ネックになるのは自ら保管・運搬等ができるかどうかである。許可を受けた銃砲は、たとえ家族であっても触れることさえ許されず、ケースやバッグに入れていたとしても、それを人に持ってもらうことはできない。

 

銃器を抱えて警察署に出頭する機会は、所持許可証取得直後の銃器確認に始まり、その後も年一回の銃砲一斉検査などがあり、すべて所持許可者本人が運搬し出頭しなければならない。警察署では、担当警察官がハンドリングに問題がないかじっと見ている。もちろん、射撃場へ練習に向かうときや射撃場での銃器のセッティングなどもすべて一人でやらなければならない。なので、運搬やハンドリングの方法について不安がある人は、前もってよく研究しておく必要があるだろう。

(警察官のほうからアシストや管理を申し出た場合はこの限りではないようだが、所持許可者からお願いすることは控えよう。)

 

銃砲が安全に取り扱えそうにないとか、ひとりで保管・運搬等ができないと判断されると許可が下りない。銃砲一斉検査などでの状況により、許可を取り消されることもあるらしい。

身体障害者は、その対策を考えておく必要があり、初心者講習の受講申込みや所持許可申請を提出するときに、担当警察官に説明できるよう、じゅうぶんに予習をしておこう。このサイトがその一助になれば嬉しい限りである。

 

もうひとつ、障害の状態についてであるが、今後、現況から状態が悪化することがあるのか、あるいは改善することがあるのかなどを気にされる場合もある。身体障害にも怪我によるものや病気によるものなど様々あり、その現況も千差万別であろう。特に病気の場合は将来どうなるかは分からないことが多いと思うが、誠意と熱意をもって説明すれば通じるものがあるように感じる。

私の場合は事故による怪我なので、病気のように進行するものでないことや、スポーツ射撃をモチベーションとして積極的に外へ出て、身体的運動機能も少しでも改善・増強させていきたい旨を説明した。病気の方々も後者のような話をすることは差支えないのではないかと思う。


日本在住の外国籍の方

所持許可申請にあたって、外国籍であることは欠格事項にあたらないので、外国籍の方も申請することは可能である。ただし、申請書類に住民票が必要となるので、国籍等が記載された住民票を用意しなければならない。

平成24(2012)年7月9日から外国人住民に関する法律(改正住民基本台帳法及び改正入国管理法)が施行され、それ以前は外国籍の者が住民票に記載されることは一部の例外を除いてなかったが、現在では、日本人と同様の様式で、外国人住民として記載されることとなっている。

 

しかしながら、外国人であれば誰でもが登録可能なわけではない。現在、登録ができるのは、次のいずれかである。

・一般永住者(在留資格としての永住許可取得者=永住ビザ)

・中長期在留者(eg.配偶者ビザなど。ただし、在留期間が三ヶ月以下の者および在留資格が「短期滞在」の者は除く)

・特別永住者(=いわゆる在日韓国朝鮮人や台湾人など)

・出生または日本国籍喪失から60日以内の者

 

※観光や商用、親族訪問などで「短期滞在」の在留資格で来日した者や、在留期間が三ヶ月以下の者、また当然だが、不法滞在や不法残留者は、たとえ本人が希望しても住民登録することはできない。

もし登録したい場合には、地方入国管理局において中長期在留者の該当となる在留資格へ在留資格変更許可を得た上で、住所地の役所へ申し出るしか道はない。

 

以上のことを踏まえると、日本に在住する外国籍の者が銃砲所持許可を申請する場合は、住民票に登録される要件を満たしている者に限られるということになるだろう。

 

書類を揃えられたとして、その審査は日本人以上に厳格なものになることは想像できる。

調べてみると、平成23(2011)年1月の通達のなかに、「申請が、けん銃、空気けん銃、ライフル銃又は国際競技に参加する外国人の銃砲刀剣類に係るものであるときは、原則として許可事務を担当する巡査部長以上の幹部が面接を行うこと」という項目があった。また、「地方検察庁に前科調査を行うものとする」という記載も見られる。もちろん、特にやましい点が無ければ、問題はないはずだ。