SH2スタンド

障害者射撃「SH2」クラスの射手は、立射および伏射姿勢において銃器を支持スタンドに委ねて射撃するが、支持スタンドは、下記のようなIPC(国際パラリンピック委員会)認定のスプリング付きの物を使用する。IPC認定のものでないと、パラリンピックなどの競技に使うことはできない。

公式のSH2スタンドは、スプリングの強度によって「ウィーク白(スタンドa)」と「ストロング黒(スタンドb)」の2種類に分かれており、背筋や腹筋など体幹機能の具合によって選択される。めやすとして、「ストロング黒」はかなり重度の車椅子使用者で上肢が不自由な方用になるようだ。どのスタンドを使うかは、正式判定を受けた結果によって選択されるべきものである。

このスタンドは、国内では静岡県のシースジャパンNSKが取り扱っている。価格は20,000円(税込み、2021年7月現在)である。購入時は上下に分離しているので、購入者が差し込んでネジ止めして組み立てるが、特に難しい作業では無い。

なお、このスタンドを支えるものは各自で工夫しなければならない。

画像:シースジャパンNSK

スプリングスタンド ウィーク白

IPC射撃用スプリングスタンドa SH2a
IPC射撃用スプリングスタンドa SH2a

弱いスプリング(白いプラスチック部品)

最小限の柔軟性35mm

サブクラス=SH2Aa/SH2Ba/SH2Ca

 

スプリングスタンド ストロング黒

IPC射撃用スプリングスタンドb SH2b
IPC射撃用スプリングスタンドb SH2b

強いスプリング(黒いプラスチック部品)

最小限の柔軟性25mm

サブクラス=SH2Ab/SH2Bb/SH2Cb

 




各部寸法

IPC射撃用SH2スプリングスタンド 各部寸法
IPC射撃用SH2スプリングスタンド 各部寸法

IPC射撃用SH2スプリングスタンドは規格が決まっているが、この支持スタンドを支える台またはスタンドの類は各自で用意することになる。特にバネから下の軸部分の寸法が重要となると思われるので、記しておく。

なお、これらの寸法は私が金属製のノギス等で測ったもので、できるだけ正確に採寸したが、公式のものではないことに留意いただきたい。

 

重量:312g

全長:290mm

 

銃受け部分外寸:80mm

銃受け部分内寸:72mm

銃受け部分高さ:30mm

銃受け部分幅:30mm

 

上部軸長さ:80mm

下部軸長さ:99mm

バネ台直径:30mm

下部軸直径:20.6mm

 

 

支持スタンドの固定器具については、カメラの三脚を改造したり、テーブルにクランプで挟むスタンドや車椅子に取り付けるスタンドなどを各自で工夫して製作している。

私の場合は、シューティングスタンドを代用している。



クッションカバー

SH2スタンドには、エアライフルのフォアエンド部分を載せて射撃をすることが多いが、SH2スタンドの銃を受ける部分は金属製のため、射手たちは銃を傷つけないようにゴムなどのクッションを貼り付けているようだ。

私の場合は、今のところ公式競技会などに出てはいないこともあって、保護用にクッションカバーを掛けて使っている。カバーと言っているが、実はこれ、ソフトクッションポーチなのだ。

HAKUBAというカメラアクセサリメーカーのポーチで、本来はカメラのパーツやアクセサリを入れるものだ。クッション性に優れたウレタンフォーム素材で、ドローコード(口紐)が付いているので、簡単にきつく縛ることもできる。

サイズがS/M/Lの3種類あるが、Mがぴったりだった。保管・運搬用の保護カバーとしても重宝するのではないだろうか。

商品名:「HAKUBA バッグアクセサリー ソフトクッションポーチ M ブラック KCS-37M」参考価格1,026円

SH2スタンド&保護カバー1
SH2スタンド&保護カバー2



SH2スタンドを保持・固定するスタンド類

制作中

SH2スタンドを固定するスタンドについて、現在、日本国内では専用に市販されているものは存在しない。

カメラ用の三脚を流用したり、自作したりして各位工夫しているようだ。

カメラ用の三脚も大小さまざまで、床に置く大きなものやテーブルに載せる小さなものまで種類が分かれる。

三脚を使用しない場合は、車椅子にテーブル状のものを取り付けて、それにSH2スタンドを固定している人もいるようだ。

銃砲店のシースジャパンや障害者射撃団体の方に聞いてみたことがあるが、障害の種類や程度が千差万別なので、今のところ各位に合うものを見つけるしか方法がないらしい。

私の場合は、現在のところ、Gehmann製のシューティングスタンドにSH2スタンドを装着して使っている。カメラの三脚を使うことは多いが、シューティングスタンドを流用するのはあまり例がないそうだ。

伸縮シューティングスタンドの一番上のパイプを逆さまに挿入すると、そのパイプ内にSH2スタンドの台座部分がぴったり、カッチリ収まるのだ。偶然なのか、寸分の隙間もない。シューティングスタンド自身も、意外と安定性があるので、特に困っていることはないが、しばらくしたら、別にスタンドを自作してみようと思っている。



SH2固定用スタンドの製作

SH2支持スタンドを固定するスタンドは市販されておらず、射手が自分の障害程度などに応じて自作している。

ここでは、もっとも簡単に製作できるスタンドを紹介しよう。テーブルの上において使うタイプだ。

この方法は、私がこの世界に入門しようとしたときに、埼玉県身体障害者ライフル射撃連盟の方に聞いていたものだが、今まで気にしつつも、なかなか製作に踏み切れなかった。

2021年11月16日にようやく取り掛かったが、拍子抜けするほど簡単で、作業そのものは15分ほどで完成した。

1)ベースとなるのはカメラの三脚だ。

SLIKのMINIシリーズで、今回使ったのはネットフリマで送料込み1,000円で購入した「SLIK mini 3」というモデルである。MINIシリーズは新旧いつくかのモデルがあるようだが、基本的な形状やサイズは同じらしい。

チェックポイントとしては、センターポール(雲台が乗っかっているパイプ)の外径が20㎜ていどであることと、そのポールを締める形状がリング式(ナットロック式)であることだ。


2)製作のためには、センターポールを抜いてSH2スタンドを差し込むだけなのだが、センターポールは底に吸盤のようなものが付いていて、そのままでは抜けないようになっている。

吸盤は柔らかいゴムのような材質なので、普通のハサミで切れば簡単に除去できる。


3)吸盤を切り取り、リング(ロックナット)を緩めれば、センターポールをスポっと抜くことができる。

なお、同じシリーズでも、「PRO-MINI III N」は吸盤を切っただけでは基部がつっかえて抜けなさそうなので、基部も切るか削るかしなければならないと思われる。


4)センターポール締め付け部のリング(ロックナット)を緩めて取り外し、SH2スタンドの軸に差し込むのだが、わずかにSH2スタンド軸のほうが大きくて入らなかったので、リングの内側をやすりで少しだけ削った。ほんのわずかな差なので、ちょっと削っては嵌めるを繰り返す。0.数ミリの世界である。

キツキツでも軸にリングが通ったらOKである。

 

取り外したセンターポール部分を差し戻せば、三脚としてふつうに使える。ただし、ストッパーになる吸盤がなくなっているので、脱落に注意する。


SH2固定スタンド 最低高266mm
SH2固定スタンド 最低高266mm

5)SH2スタンドの軸にリング(ロックナット)を通した状態で、三脚本体に嵌めて、しっかり締める。本体側は削るところなく入れることができた。

写真は最低の高さにした状態で、床から銃受け部分まで266mm。

このMINIシリーズは、脚をわずかに伸ばすことができるが、それだと高さ285mmとなる。さらに、その状態で、SH2スタンドを上に引き上げると、床から最高335mmほどになる。

 

参考として、伊勢原射撃場のテーブル高は750mmなので、それに乗せると、床から1,016mm~1,085mmの高さの間で使用できることになる。

 

射撃場に備え付けのテーブルの高さが高いと、このスタンドは使いにくくなるので、折り畳み式のテーブルを持参している射手もいる。車椅子を常用している射手の中には、車椅子にテーブルを取り付けて、SH2スタンドを固定して使っている人も多い。

車椅子を使わない射手には、椅子も持参する例がある。

 

参考→札幌ライフルクラブ


SH2固定スタンド 脚を伸ばした状態 高さ285mm
SH2固定スタンド 脚を伸ばした状態 高さ285mm
SH2固定スタンド 最高高335mm
SH2固定スタンド 最高高335mm


↓SLIK Mini 3は、吸盤を切り取るだけでセンターポールを抜くことができる。

SLIK Mini 3 吸盤部分
SLIK Mini 3 吸盤部分

↓SLIK PRO-MINI III Nは、基部(ポールとの接合部)の外径がポールより若干大きいので、吸盤を切っただけでは、これが邪魔して抜けないと思うので、ここも削り取る必要があるだろう。

現物を見ることができるのならば、切り取る前にポールを引っ張りあげれば、構造がすぐに分かる。

 

SLIK PRO-MINI III N 吸盤部分
SLIK PRO-MINI III N 吸盤部分


参考

この写真は、三脚にスマホ用のホルダーを直結したもの。

SH2支持スタンドを使う前に、試し撃ちで使用していたものである。実際には、雲台を外した状態でスマホホルダーを付けていた。スマホホルダーには元々クッションが貼ってあるので、銃をそのまま載せても安心だ。