電子標的システム

紙標的自動交換機に次いで、最近では電子標的を導入しつつある射場も出てきた。

電子標的は紙の標的を消費することなく射撃を行え、また得点や着弾点なども手元のディスプレイで即座に確認できるものだ。 国際大会レベルの競技会では電子標的が標準とされている。

2019年4月から神奈川県立伊勢原射撃場にも正式に導入されたし、2020年には東京・目黒区立中央体育館の大規模改修が完了して、エアライフル射撃場の7射座すべてが電子標的になった。国内の射撃場では電子標的化への道を歩み始めている。

日本国内に設置されている電子標的システムのメーカーは、スイスのSIUS社か、ドイツのMeyton Electronik社かのいずれかだと思うが、銃弾計測のしくみは異なり、セッティングや操作方法にも若干の違いがある。

参考までに、オリンピックやパラリンピックではスイス製のSIUS社のものが使われていることが多いそうだ。 

 

伊勢原射撃場は、2019年3月26日をもって電子標的の設置が完了し、3月27日より全的が電子標的となった。

私は3月28日(木)にさっそく練習モードで利用してみたので、以下にレポートする。

設備はドイツのMeyton Electronik社製のもので、射撃結果をプリントアウトして持ち帰ることもできる。初めての電子標的だったが、使用方法はきわめてシンプルで、備え付けの簡単な説明書きにしたがって操作すれば迷うことはなかった。

(2021年4月より電子標的に装着するマスクが自己負担となり、自分で装着・取り外しする。)

 

目黒区立中央体育館は、2020年3月に大規模改修工事を完了したが、COVID-19の影響でオープンが7月にずれ込んだ。

旧射撃場は6射座で紙標的の自動交換機が設置されていたが、新射撃場は7射座になり、全的にSIUS社製の電子標的が導入された。ただし、感染予防対策のため、当初は4射座で運用していた。2021年11月より本来の7射座で運用している。


Meyton社製 電子標的システム

2019年3月末に伊勢原射撃場に導入された電子標的の使用方法(練習モード)を記す。

 

設備はドイツのマイトン社(Meyton Elektronik)製のものである。同社の東日本ディストリビューターである有限会社三和管財のサイトによると、マイトンシステムは多数の赤外線を整然と並べてカーテン状の測定エリアを作り、そこを通過した弾丸の影の位置を測定するもので、測定用消耗品のゴムや紙を使用することはないとのことである。また、マイトン測定フレームは「固定されたセンター」を持ち、常に同じ位置にあって、測定制度は1/100ミリだそうだ。

操作は、有線の操作コンソール(リモコン)のボタンで行う。操作コンソールは裏側に滑り止めのゴムが付いている。

伊勢原射撃場 電子標的 取扱説明(表)
伊勢原射撃場 電子標的 取扱説明(表)

種目欄:

AR=エアライフル(Air Rifle)

AP=エアピストル(Air Pistol)

S=射撃姿勢・立射(Standing)

競技名称欄:

ISSF=国際射撃連盟(International Shooting Sport Federation)

伊勢原射撃場 電子標的 取扱説明(裏)
伊勢原射撃場 電子標的 取扱説明(裏)


モニターの電源スイッチは背面の左下にある。軽く押すだけでONになる。もう一度押すとOFFにできる。

画面エラーとなっていたら、背面の機械の電源ケーブルを抜き差しすることでリセットさせるという方法がある。



写真は、電源をONにした状態の射撃開始前のモニター画面。

右上の数値「108」は射座番号=8番を示している。

このように表示されていれば、正常に起動しているということだ。



 

まず、操作コンソール(リモコン装置)で競技種目を選択する。競技種目リスト表示のためには、リストマークのボタンをかなり長く(5秒ほど)押し続ける必要がある。

エアライフルの練習モードで射撃をする場合は、

成人男子=ISSF AR Men、

成人女子=ISSF AR Women、を選ぶ。

操作コンソールのボタンは左右表示だが、画面の選択は上下に動く。希望の行に合わせたら、再びリストマークを5秒ほど長押しすると元の画面に戻る。選択した競技種目は画面左上に表示されている。

AR Finalを選べば、ファイナルモード(試合モード)に入る。

10m種目が表示されない場合は、虫眼鏡マークのボタンを押すと切り替わる。

なお、競技種目を変更すると、それまでの射撃結果はすべて消去されてしまうので、必要に応じて印刷出力しておかなければならない。



モード選択が完了したら射撃開始だ。写真は、

ISSF AR Men=エアライフル成人男子、

Prep.&Sighting=練習モード、

に設定されている。

紙標的と同じ要領で、標的に向かって空気銃弾を打ち込むと、モニター画面に着弾点と点数が表示される。黄色い円の数字「1」は1発目という意味だ。

私の記念すべき電子標的1発目は9.1点だった。



そのまま次弾を打ち込んでいくと、着弾点は重なって表示されていき、それぞれの点数は左側にリスト表示される。

恥ずかしながら、4発目にしてようやく10点(10.3)が出た。10点圏に当たったときだけ着弾点が赤色で表示される。

画面左上の「37.8」は現時点(4発射撃後)での合計点数で、左下の「~9.45」は現時点での1発あたりの平均点数である。

矢印は着弾位置を示している。

また、弾着は次のように色分けされるので、チラッと見るだけで10点圏か9点圏か、それ以外かが分かる。

10.0~10.9=赤色

9.0~9.9=黄色

8.9以下=青色

(過去の弾着は黒灰色に変わっていく。)



着弾点の表示は5発ごとに自動的にクリアされる。

また、標的は集弾状況に合わせて自動的に拡大や縮小されるので、7発目のように大きく外してしまうと縮小された標的表示になってしまう。

(恥ずかしいので、以後の点数はモザイク処理で・・・。)



逆に10点圏のみ捉えると、標的はこのような拡大表示になる。センターからのずれ具合が良く分かる。競技会レベルだと常にこのように表示されているのだろう。

写真の41発目の得点は10.7と出ている。



48発目にして初めて「10.8」をマークしたので、記念に撮影してみた。1発ずつ正確な数値としてすぐに結果表示されるので緊張するが、それだけに一発一発を大切に撃つようになる。

毎回点数表示が目に見えるビームライフルを思い出す。紙標的のほうが実銃で射撃をしているという実感が持てたが、電子標的も楽しい。

初めて体験した電子標的では、緊張疲れもあり、丁度キリがよいところで60発で終了とした。



射撃練習が終了したら、結果を印刷出力(プリントアウト)しよう。操作コンソールの右方向ボタンを5秒ほど長押しする。

画面上部にPrint job「Your target is being printed(あなたの標的結果が印刷されています)」と表示されると印刷出力が行われる。

なお、この表示は数秒間、画面上に出るだけですぐに消えてしまうので、見逃さないように。



伊勢原射撃場では、印刷結果は第2控え室にあるプリンタにA4用紙で出力されているので、自分で取りにいく。

(自分の射座番号を確認のこと。)

モニター画面をクリアするときは、操作コンソールの緑色のボタン(試射的の交換)を押すか、競技種目リストを表示させてから元に戻せばよい。

終了時にはモニター電源をOFFにしておくのを忘れないように。