サイトは標的に照準を合わせるための目安とする装置だ。射撃をするにあたって、銃を台に置くなどして固定した状態でゼロインしておく必要がある。サイトの照準と実際の弾道が一致していなければ、正確な射撃をすることができないからだ。公式の大会でも、本射に入る前にサイトを調整する試射時間が与えられている。
サイティング(照準方法)は、リアサイトから覗いて、フロントサイトを通じて標的のセンターを狙う。競技用エアライフルのサイトはいわゆる光学式スコープではないので、拡大などの倍率は設定されていない。
エアライフルには、リアサイトとフロントサイトというふたつのサイトが付いていて、その両方を使用して10m先の的を狙う。
単純に言えば、目に近いところにあるリアサイトから覗いて、銃身の先にあるフロントサイトの中央部分と標的の中心点が一直線上に並んだときが正しく照準した状態だ。
具体的には、リアサイトにはごく小さな穴が開いており、それを覗くとフロントサイトの中にある円形の目印が見える。その円の中心に標的のセンター部分を持ってくる。標的は4点圏から内側が黒く色付けされているが、10mも離れると、サイティングしたときはその黒い部分が点にしか見えない。フロントサイトの円の中央に、標的の黒い点を同心円状に捉えた瞬間に引き金を引くことになる。
下記の図では分かりやすくするために青や赤色に着色しているが、実際はいずれも黒色で見える。
なお、フロントサイトのインサートには様々なデザインがあるが、中央の円の中に標的を合わせるという点では同じである。
リアサイトは射手の目に近いところにあるサイトだ。基本的には小さな穴が開いている照準器で、そこから覗いてフロントサイトを通じて標的に狙いを定める。狙い通りの弾着が得られない場合は、リアサイトに付いているノブ(ダイヤル)を回すことで、上下や左右の弾着位置調整を行うことができる。
10mエアライフル競技では、倍率のあるスコープのようなものは使うことができない。
参考に、ワルサー社のエアライフルLG400に標準で付属しているリアサイト(INSIGHT-OUT Competition sight)について、弾着位置を調整する方法を記す。調整は2つのノブを回すことで行う。サイトによって1クリックによる動きが異なるので、各自取扱説明書を参照されたい。特にドイツ製のサイト調整は安易に扱うと痛い目を見る。
また、1クリックで調整される弾着は標的上で0.2~0.6mm(モデルによって異なる)ので、むやみに回さないことだ。ノブの数字を控えておくなどして、迷子にならないようにしよう。
とはいえ、調整するときは、試合前でもない限り、4クリックずつぐらい思い切って合わせこんでいくのがコツのようだ。
ワルサー以外のドイツ製リアサイトについても、操作方法は同じである。
<INSIGHT-OUT Competition sightの場合>
射撃距離10mで使用する場合、上下左右とも1クリックで0.4mmの幅で移動する。
・上下方向の調整=上方のノブを回す。
→弾着が上方へ集弾する場合=(H)方向へ回す(時計回り)
→弾着が下方へ集弾する場合=(T)方向へ回す(反時計回り)
・左右方向の調整=側面の目盛りがあるほうのノブを回す。
→弾着が右へ集弾する場合=(R)方向へ回す(時計回り)
→弾着が左へ集弾する場合=(L)方向へ回す(反時計回り)
ドイツ製リアサイトの調整については、われわれの感覚と少し異なっているように思える。
というのは、たとえば弾着点が右にそれる場合、左方向へ戻したいので、(L=左)と書いてあるほうへノブを回したくなるが、実際は逆で、(R=右)と表示があるほうへ回すと左へ寄るのだ。
同様に、上下についても弾着点が下にそれる場合は、上方向へ戻すために(T)の表示があるほうへノブを回さなければならない。
考え方としては、現在着弾している位置をノブで示すという感じだろうか。「いま右に着弾しているから、(R)へ回す」ということになり、調整方向を示しているのではないということを意識しておかねばならない。
そもそもドイツ製のリアサイトに表示されている文字が、我々の誤解を招きやすいのかもしれない。
ドイツ語の「左=Links」と「右=Recht」は、英語のLeftとRightに似たところがある。しかし、リアサイトに書いてあるLとRは単純に左右を示しているのではなく、「L=Linksschuss」と「R=Rechtsshuss」という意味であり、それぞれ「左の弾着」と「右の弾着」を指している。「bei」と併せて、英語で考えると分かりやすい。つまり「bei Linksschuss = at Left shot」ということである。
同様に、上下調整ノブにある文字は、「H=Hochschuss」と「T=Tiefschuss」で、それぞれ「高い弾着」と「低い弾着」を指す。すでにお気づきのとおり、schussは英語のshotである。
余談だが、某射手は、Hを「着弾点を低く(Hikuku)する」、Tを「高く(Takaku)する」と覚えているそうだ(笑)。
ドイツ製リアサイトはビームライフルにも装着されているので、ぜひ覚えておいていただきたい。
ライフルショップ・エニスのカタログを見てみよう。
0.2mm/10mとは、10m射撃(エアライフル)で使用した場合、ノブを1目盛り(One Click)動かすと標的上の弾着が0.2mm移動するという意味である。
同様に1.0mm/50mとは、50m射撃(装薬ライフル)で、1目盛りあたり1.0mm移動するということ。
銀座銃砲店のカタログでは、総クリック数が掲載されている。
左右兼用とか左仕様というのは、クリックするノブが左右どちらの手で回せるかという意味である。
ちなみにエニスのカタログで、ANS(アンシュッツ)、FWB(ファインベルクバウ)、WAL(ワルサー)は、それぞれ装着する銃器メーカーを指す。注文するときは、使用銃のメーカーを知らせることを忘れずに。
リアサイトの接眼部分のパーツ。ベーシックなリアサイトは穴が開いているだけのものだが、アジャスタブルアイピースを装着することにより、穴の径や明るさを変えたり、偏光フィルターを入れたりすることができる。基本的には、リアサイトの接眼部分だけを取り替える(ネジ式)ことになる。
射場の明るさは場所によって異なる場合があり、そんな状況の中でサイトから見える明るさを好みのものに変えるのに有効なのが偏光フィルターだ。広島県在住のベテラン射手M氏によると、電子標的が普及しつつある昨今では、標的が過度に眩しく感じる射手も少なくないらしく、目の疲れを予防する意味でも偏光フィルターがとても役に立つそうだ。
また、これがないと、目が疲れるとフロントのリングがにじんで見えにくくなることもあるという。
画像:国友銃砲火薬店
アジャスタブルアイピースの一例として、セントラ製のコンビアイピースについて記しておく。
穴径:0.5~3.0mm
フィルタ:濃灰・灰・黄・緑・青+偏光
以下、広島県のM氏に取り付け方や使い方、そのほかのアドバイスをいただいたので紹介させていただく。
アジャスタブルアイピースは目に近いところから、「絞り」「カラーフィルター」「偏光フィルター」の順に操作ダイヤルが並んでいる。
注意点は、最初に「偏光フィルター」を全開にして明るくすること。反対に回すと、真っ暗になって何も見えない。
使い方としては、AR(エアライフル)では主に「絞り機能」を利用し、覗いた状態で「絞り」を変えてみて、目のピントが一番合いそうなところで止める。目が疲れて標的がにじんできたら、少し絞るなどしてピントの合わせ直しをするとよいとのこと。
眩しいときなどは偏光フィルターやお好みでカラーフィルターを使用してみる。ただ、偏光フィルターはSB(スモールボアライフル)ではよく使うが、ARではあまり出番がなかったと言う。
↑購入時はこのような状態。リアサイトのアイピースを外して、この状態のまま、ネジが切ってある部分をリアサイトにねじ込む。最後に六角ナットを軽く締めて完了だ。
↑サイトに目隠し板を付ける場合は、まず六角ナットを外して、さらに付属の専用工具を使って縦筋のナットを緩めるか、外すかして挿入する。縦筋ナットはやや硬いことがあるので、外すときは慎重に行う。
↑ワルサーLG400に標準添付のリアサイト(INSIGHT-OUT Competition sight)からアイピースを外したところ。
↑CENTRAコンビアイピースに換装例。
中央部分にリング(円形)が表示されていて、リアサイトから見たとき、リングの中央に標的の中心を捉えた瞬間が見事にサイティングされたときである。そのリングの形状などはインサートと呼ばれるもので、円の外周の幅の違いや、上下左右にクロスなどのラインの有無などさまざまなデザインの違いがある。照準方法は同じだが、射手の好みや癖、競技会場の環境などによって選択されているようだ。
ワルサー社のLG400アルテックエキスパートに標準で付属するフロントサイト(セントラ・スコア)には水平バーが入っているが、たとえば、「クリアインサート」と呼ばれるものは、水平バーが無くリングが浮いたように見えるデザインになっている。
また、別売りのフロントサイト(DUOなど、下記参照)には、リングの厚さを任意で変えることができるものがある。
なお、フロントサイトの口径は主にM18とM22がある(M18のほうが小さい)。ワルサー社LG400に付属しているフロントサイトはM18だが、フロントサイトごと変える場合は、基本的には同じM18で選ぶほうがよいと銃砲店からのアドバイスを受けたことがある。もし、それが小さく感じたり、暗く感じたりするようであれば、M22を検討するのもひとつの手ではある、ということだった。
centra CENTRA SCORE
ワルサー社エアライフルLG400に標準で付属しているフロントサイト。黒い縁があるほうを射手側にして装着する。
口径はM18で、インサートは水平のライン入り。
銃への装着は、黒い台座部分のネジを六角レンチで開閉することで行う。
↑ワルサーLG400に標準添付のCENTRA SCORE装着例。
ブロックを一つ入れてハイサイトにしている。
↑CENTRA DUO VARIO ブラックに換装例。口径はCENTRA SCOREと同じM18。
フロントサイトも、リアサイト同様、各社からいくつかのモデルが販売されている。標準で付属しているサイトに物足りなさを感じたら、ほかの物を試してみることもできる。注文の際は、使用しているエアライフルのメーカー(ANS:アンシュッツ、FWB:バウ、WAL:ワルサー)を指定し、口径(M18/M22)も決めておかなければならない。
下記のDUOなどは、リングの太さを変えたり、黒点との隙間を増やしたいときなどに使用できる。
ただし、広島県のM氏によると、SB(スモールボアライフル)の場合は、カーボンチューブを使用することによりフロントサイトの位置をさらに長く取れて変化のある調整ができるが、銃身長が固定されているAR(エアライフル)の場合は、標準で適切に調整されているので、個人的にはDUOは必要ないのではないかとのご意見だ。
なお、フロントサイトだけを乗せ換えても、当然、サイトは大きく狂ってくるので調整が必要になる。
centra DUO-VARIO
ノブを回すことで、クロスヘアとクロスビームを選択することができる。リングの幅も変更可能で、照準するときの見え方が変えられる。
黒点の隙間を狭くするより、広く取っても案外当たるようである。
2017年に紹介された新型のフロントサイトで、グローブ部分を取っ払った斬新なデザインが特徴だ。デザイン性だけでなく、グローブがないため多くの光が入射することでシャープな視界が確保され、標的をより早く鮮明に捉えることができる。
通常は、下記左の画像のように1枚のみで使用できるが、同心円が作りにくいと感じる方は、フロントサイトの輪郭を際立たせるためのガイドリングを装着することも可能だ(画像右)。
全メーカー対応という親切設計も売りのようである。
画像:Facebookライフルショップエニス
セントラ・グラスキューブは、形状が立方体で直感的に傾きを判断しやすくなり、さらに本体が半透明なためインサートリングが宙に浮いて見えてエイミングに集中しやすくなる効果がある。
赤いドットがある「IL」タイプは、ドットでフロントサイトを目立たせ、集中効果がいっそう増すようだ。
ワルサー社のエアライフルLG400アルテックは、フロントサイトもリアサイトも取り付け方は同じだ。フロントにもリアにも目立たない形のレールが付いていて、そこにサイトを滑り込ませて、適切な位置に六角レンチで固定する。
締めすぎてネジ山をつぶしてしまわないように注意しよう。ちなみにネジ山をつぶすことを「ネジをなめる」とか、「ネジが馬鹿になる」とも言う。
サイトは前から入れても後ろから入れても良い。どちらのレールにも目盛りが刻印されていて、それを目安にして常に同じ位置にセットできるようになっている。
↑レールに目盛りが刻印されていて、常に同じ位置でセットできる。
↑リアサイト取り付け場所にも目盛りが刻印されている。写真ではcentra MEC製のTeleが装着されていて、リアサイトをさらに後方へずらしてセットすることができる。このパーツにも目盛りが刻まれている。
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