射撃用ウエア

一般健常者の競技用エアライフルの射手は、上下に射撃用の硬質のウエアを着用する。上はジャケット(コート)、下はズボンだが、主に皮革(レザー)とキャンバス生地を併用したものや合成素材を使用したものがあり、身体をがっちりと固めて姿勢を安定させるため着用される。肘や膝、肩部分には滑り止めの加工が施されている。これを着用すると立射などの射撃姿勢に身体が固定されるので、腕の上げ下げも簡単にはできず、まともに歩くこともできないほどである。床に落ちたものを拾うこともままならない。

ジャケットは前開きで着脱はボタンで行う。ズボンについては、後ろ側の太腿あたりから足首までのジッパーを開閉することで身体にフィットさせる仕様になっている。

夏も冬も原則として同じものを着用するので、空調設備が無い射撃場だと、夏場はサウナ状態になるようだ。

なお、ISSFルール上は、伏射のみの競技ではズボンの着用はできないことになっている(3姿勢は可)。

 

射手の身体にぴったり合わせて着用するために、一部既製品も用意されているが、ほとんどはオーダーメイドで作ることになる。1着で3姿勢をカバーするものが普通だが、プローンジャケットと言う伏射専用に設計されたものもある。

メーカーはCapapie Sportsカパピー(インド)、Kurt Thuneクルト・チューネ(フィンランド)、Marksman Houseマークスマン(韓国)、HITEXハイテックス(チェコ)、SAUERザウアー(ドイツ)、MONARD SHOOTINGモナード(スウェーデン)、中順社(中国)などのものがあり、日本ではカパピー、クルト、マークスマンあたりが一般的なようだ。

(注:クルトの正式社名はOy Teema Line LTD。)

また国産品として、荒井商事というメーカーもあるようだ。

 

価格はジャケットが7~18万円ほど、ズボンが6~14万円ほどと幅広い(税・送料別)。初心者用としては、シースジャパンオリジナル既製品やカパピー社製で上下で10万円以内で収まるものもあるようなので、銃砲店に相談してみるとよいだろう。

身体にぴったり合うように作るので、銃砲店に出向いて採寸してもらわなければならない。完成すると宅配便で送ってもらえる。遠方で出向くのが無理な場合は、自分で安易な採寸はせずに銃砲店の指示に従うか、詳しい関係者の指導を仰ぐべきである。

なお、オーダーしてから入手できるまで30~60日ぐらいを要する。

 

うまくサイズが合うようならば、既製品が安上がりで済む。ただし、左右兼用ではないので、左射手の場合はチョイスがいっそう少なくなるかもしれない。中古品を探す場合でも、数が少ないという点で左射手は苦労するのである。

 

それと、2013年のISSFルール改定によって、ウエアの規格について基準が指定されているので、現在銃砲店で販売されているものは問題ないと思うが、中古品などを入手する際は注意しなければならない。「ISSF2013年規則適合品」であるかどうか確認しよう。


障害者射撃用ウエアについて

身体障害者のための射撃用ウエアとしては、立位であれば一般健常者と同じもので構わないが、座位で射撃をする場合、ジャケットの着丈はウエストの辺りまでで、一般のジャケットよりはやや短く仕立てられる。座位ではズボンは必要としない。

またジャケットのボタンを留めるにも苦労するものだが、ボタン留めをスムーズにするツールも販売されている。もちろん、これは健常者も使える、というか元々は一般向けのツールである。



射撃用グローブ

グローブ(手袋)は、基本的には銃のフロントエンドを支えるほうの手に嵌める。右射手ならば左手に付ける(=左手用)。もちろん、両方の手に装着しても構わないし、両手とも付けないでも良い。

ショートタイプとロングタイプがあり、また指を出すものと包むものがあるが、各人の好みで選択して良いらしい。ただ、グローブそのものは、パフォーマンスを決定的に左右するアイテムではないようだ。



射撃用シューズ

足首まで覆う紐靴タイプで、靴底がフラットな形状になっており、主に立射で足をしっかりふんばり、安定した状態で立つことができる。ISSFルール上は、3姿勢競技のみで使用が許されており、伏射のみの競技では着用は認められていないらしい。

また、以前は靴底が寸分も曲がることの無い硬質な仕様で、つま先から少しはみ出して角ばった形状のものが主流だったようだが、2013年からISSF(国際射撃連盟)のルール変更が実施され、公式の大会ではそのままでは使うことができなくなった。

 

変更点は、次の2点である。

・靴底の柔軟性

射撃用シューズの靴底は、測定器に固定され、かかとの部分に15ニュートンメートルの力を加えた際に、少なくとも22.5度曲がらねばならない。

・靴底の輪郭

靴底は靴本体の外縁に沿っていなければならない。靴底は、靴本体の外側から5.0ミリメートルを超えて伸ばすことはできない。つま先部分を正方形に切ったり、平らに切ることは許可されない。

 

つまり、靴底がまったく曲がらないような硬質のものはダメで、靴底も大きくはみ出す形状の物はダメというわけである。なので、中古品など古いものを購入・使用するときは注意を要する。もしそのような靴を所持している場合、靴底に溝を切って柔軟性を出し、はみ出している部分はカットするなどの対策で乗り切っている人もいるようだ。